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永田哲也さんの作品とちょっといい話

和菓子の木型職人ってご存知でしょうか?
落雁や金華糖などの和菓子作りに欠かせない木型を彫る職人さんのことです。

魚や花、四季の図柄を、何種類ものノミと彫刻刀で左右凸凹を逆に彫っていくそうで、
江戸時代には沢山の職人さんがその職人技、名人芸を競ったそうです。

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子どもの成長を願うお祝い事や冠婚葬祭に用意されるなど、折々に人々の生活を潤してきた木型の和菓子。

こうしたものは大量生産大量消費時代の突入とともに急激に減少し、木型職人も、そして祈りと感謝の祭礼も、その姿を消しつつあるのが現状です。

「そんなのってモッタイナイ!」

と叫んだかどうかは知りませんが、こうした状況に一石を投じようと立ち上がったのは美術家でMOTTAINAI Lab研究員の永田哲也さん

全国に散らばる意匠を凝らした和菓子の木型を集め歩き、
その木型を和紙で形取ったオンリーワンな作品を作り、木型そのものだけでなく、そこに込められた祝いの気持ちや時代の記憶を表現していく、そんな活動を続けていらっしゃるのです。

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<永田哲也さんの作品たち>


そんな永田さんが最近制作されたのが



こちらの作品。


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伝統工芸品である房州うちわ(←こちらも職人激減中)を使い、見事な鯛の木型を西の内和紙というもちもち、すべすべの和紙で形とった作品です。
(西の内和紙は、和紙業界で「女性の肌のよう」と言われているそうで、本当にもちもちですべすべなんです)

さて今日のメインテーマ。

もともとの鯛の木型を彫ったのは、和菓子の木型職人の渡邉俊夫さんという方。
20年前に亡くなった後、今は跡を継ぐ者もいないそうですが、3代に渡って虎屋の専属職人だった渡邉さんの木型は、現在も虎屋で大切に保管されています。

それにしてもこの鯛。見事な躍動感です。

それもそのはず。
この鯛の木型にはちょっとよいお話があるのです・・・・・。



******

菓子の木型職人としての腕に絶対の自信を持っていたものの、時代の流れとともに仕事が無くなり、しょんぼりしていた渡邉俊夫さん。
ある日のこと。
奥様が 「○○さんから依頼がきた」 と言って大きな鯛の型を注文されたのだそうです。

久しぶりの仕事に張り切る渡邉さん。
出来上がりは、それはそれは見事な鯛でした。

ところが
この鯛の木型の注文。

○○さんから注文依頼がきたというのは、実は、奥様が渡邉さんを元気づけようとついたウソだったのです。

結局、奥様のウソ注文は最後にバレて、(奥様をきっと愛しく思われたのでしょう)渡邉さんは奥様に金の指輪を買ってあげたのだとか。

渡邉さんが亡くなって10年後に奥様も亡くなられたそうですが、最期までこの時の指輪とそして鯛の木型を宝物として大切にしていらしたそうです。

******




和紙アーティスト・永田哲也さんいわく、
使い古された和菓子の木型を形取ると、ほのかに甘い香りが和紙についてくるのだとか。
それと同じように、渡邉さんや奥様や沢山の方たちの想いや時代の記憶が、きっとこの和紙にはほのかについているのだと思います。
   by mottainai-team | 2007-09-05 19:01 | MOTTAINAI倭 | Comments(0)
  
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